その実この瀧の水が臭くて鼻持がならない

 明治45年(1912)7月3日に開業した大阪の新世界・ルナパーク。初代通天閣とホワイトタワーの間にあった「真澄ノ池」の噴水を調べている途中、面白い新聞記事を見つけたのでご紹介したい。題して「臭気満々の飛瀑」。


 大阪時事新報は「新世界めぐり」と題した新世界の案内記事の第3回で、ホワイトタワーから流れ落ちる「綾糸瀧」と滝を取り囲む「真澄ノ池」を取り上げている。


 「…成程こいつ(綾糸瀧)は玉簾を懸けたるが如しとでも云うのだすやろ、この下の白雨亭とやらいうビヤホールに腰かけて一杯傾ける時んば涼風自ら脇下に生ぜん、とか何んとか云って進(あ)げたいがその実この瀧の水が臭くて鼻持がならない、斯んな所で麦酒でも飲んでいる奴は大方鼻つんぼだろう、その瀑下の池は眞澄池とか申してエライ美しい名なんだが、池の縁に腰でも掛けようものなら臭気紛々鼻が除(と)れて了いそう、何んでも井戸の水を機械で運んでござるらしいが、水の加減か運転作用の工合か兎も角もアレでは衛生上宜しくありますまい、兎角斯んな事には八釜敷い警察は何んとしてござる…」(大阪時事新報,明治45年7月8日)


 絵葉書を思わず嗅いでしまった。


 ルナパークの絵葉書を手に取るときには、自分が体験した「鼻が除れて了いそう」な臭いを鼻いっぱいに思い出しつつ眺めてみることをお奨めしたい。