2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

東京大学噴水物語(十・補遺)

銅像には人を冷静ではいられなくする何かがあるらしい。銅像に涙し、激高し、かつぎ出し、戦場へ送り、紙玉をぶつけ、縄を掛けてひきずりまわす。銅像に振り回される人/銅像を振り回す人という連想で、東大五月祭と絡めて話を一つ。題して「忠犬ハチ公・イ…

東京大学噴水物語(九・完)

「年に二三度の他は可能性をひそめて黙す『九輪』」(『東京大学学生新聞』昭和29年5月21日付)とは物は言いよう。昭和26年(1951)に復活を果たした噴水塔であったが、水を噴き上げるのはもっぱら学園祭など特別な時ばかりだった。美化せずに語…

東京大学噴水物語(八・続)

昭和26年(1951)10月4日付の『東京大学学生新聞』は「無視」という意味深なタイトルの記事で次のようなニュースを伝えた。 「アカデミズムの本舗・東京帝国(?)大学の、これ又中心にそそり立つロツクフエラー図書館の玄関前にささやかな噴水がで…

東京大学噴水物語(七・続)

西郷さんの大脱線から急いで本線へ戻る。 大学側の《わだつみ像》受入拒否に対し、像の寄贈・設置を企画した「わだつみ会」を中心に各界からすぐさま激しい非難の声が上がった。しかし、大学側を動かすには至らず、運動は自然と下火になり、第2ラウンドは翌…

東京大学噴水物語(六・続)

政治的な銅像という連想から、大きく脱線して「汚れた英雄」という話をはさみたい。噴水とは全く関係ない。 1980年代後半の東欧革命やソ連崩壊、近年ではイラク戦争で、一国の「英雄」の威信が一夜にして地に堕ち、銅像が引き倒されるという光景がたびた…