「東京市内の噴水量」

風俗画報(343号) 明治39年7月

東京市内の噴水量

 東京水道の根源にして、百八十万人の市民が市民が生命の綱と頼める多摩川本流が、昨今大に減水し、此分にて押行かば由々敷大事に及ぶことあるやも計られず、右に付東京市水道課に於ては、此際成るべく余計の水を使用せざる方針にて第一に市の設計になれる瀧及び噴水を中止することとなりたるが、現在の瀧及び噴水のある個所は浅草公園噴水二ヶ所、日比谷公園同二ヶ所、靖国神社瀧一ヶ所、噴水一ヶ所、芝公園瀧一ヶ所にして、其噴水一時間の水量左の如しと云う。

 浅草公園観音堂裏噴水  二四六、八七五
 同六区池  三一、二五〇
 日比谷公園(鶴) 五九、三七五
 同(鵞鳥) 二九、六八七
 芝公園紅葉の瀧 八一、二五〇
 靖国神社瀧及び噴水(鯉) 三一、二五〇

合すれば四百七十九石六斗八升七合となり、更に一日十八時間噴水せしむるものとして以上七ヶ所より噴出する一日の水量は実に八千六百三十四石三斗六升六合となる勘定なり、而して普通の家にて使用する一日一人の水量を平均六斗二升五合と仮定すれば、此噴水によりて裕に一万三千余人の使用水量を贏し得べしとなり。