大倉喜八郎邸の噴水

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 明治の実業家、大倉喜八郎が赤坂葵町の私邸(現在はホテルオークラ東京)に設けた蓮の噴水である。

 『風俗画報』の写真では「蓮」と判らなかったが、雑誌『太陽』第14巻2号(明治41年2月1日)掲載のお宅拝見記事「大倉喜八郎邸概観」によれば、「池の蓮花の紅色緑色をなせしものを作りし」とある。円い池の中央に蓮の葉を模した大小四枚の水盤を、高さを変えて互い違いに配し、蓮の実からの噴水を受ける仕掛けとなっている。

 邸内には「其数二千五百何十種に達して居る」という多くの仏像を集めた美術館があった。また、庭園には「中央稍々高き所に金色眩き支那佛を安置せる」とあり、蓮の噴水はこうした仏教趣味を受けてデザインされたのではないだろうか。

 『太陽』の評者は金色の仏像然り、蓮の噴水然り、「甚だ以て俗である」と酷評するが、某紙が「個人の庭園などにも随分噴水はあるが装置のすぐれたものとして挙ぐべきは麹町葵町の大倉邸のものと芝高輪の渡邊伯邸のであろう」と評したように、類例のない造形の面白さを推したい。