鶴は千年、亀は万年②

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 東宮山形市への行啓は、最初に紹介した絵葉書の記念スタンプが伝える9月16日が初日であった。千歳公園に設置された噴水器について、当時の山形新聞は行啓前日の市中の光景として次のように述べている。「千歳公園内第一池の噴水器は己に竣功し岩上及び盤上に立ちたる五羽の鶴の嘴から見事に噴水されて居たが、千歳変らぬ池畔の緑松が澄みたる池心に影を映して噴水の点滴より起る小波にゆらるる状は層一層の風情を添えて居る………池の周囲には目に珍らしい記念の噴水器を見んとて四方より集った老若男女が賑々しく逍遥して居たが、御休憩所(*)の附近には流石に謹んで寄付く者がなかった」(山形新聞明治41年9月16日)


 これで以前ご紹介した3枚の絵葉書の年代順が明らかになった。鶴が高らかに水を噴き上げている絵葉書、これが最も古い。水盤の上に鶴がいない2枚の絵葉書が後年のものである。さらに今回の1枚を加えると、設置後のいずれかのタイミングで水盤上の鶴が取り外され、ついで周囲の鶴が外されたようである。


 では、鶴が取り外されたのはいつの出来事だろうか。残念ながら時期を示す確実な史料はまだ見つけ出せていない。現在までのところ、大正11年(1922)発行の井上多充編『親切な山形案内』という山形の観光案内書の中に千歳公園の解説として「池中には鶴の噴水…」という一節があることを確認している。大正11年の段階では(水盤上の鶴は不明であるが)少なくとも周囲の鶴は存在していたようである。


 (*)御休憩所は池の西方に新設。