東京大学噴水物語(二)

 『総合図書館ガイド2007』を見ながら総合図書館の歴史を簡単に振り返ろう。

イメージ 1 東京大学における図書館の設置は明治10年(1877)まで遡る。江戸時代から受け継がれた資料を中心に蔵書を増やし、震災直前には76万冊に及ぶ蔵書があったという。しかし、大正12年(1923)の関東大震災で旧図書館は全焼全壊、膨大な数の貴重な蔵書が失われた。被害は甚大であったが、国内外から多大な支援が寄せられ、目覚ましい速さで復興事業は進められていった。こと大正13年(1924)末にアメリカのロックフェラーが申し出た寄付(当時の金額で約400万円)が建物の再建に大きな役割を果たし、大正15年(1926)には着工、震災からわずか五年後の昭和3年(1928)12月1日には竣工式を迎えるに至った。この新図書館が現在の総合図書館である。新図書館は旧図書館よりやや南寄りに位置し、噴水はかつて旧図書館があった空間に設けられた。


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 青銅製の噴水塔は、震災後のキャンパス復興で営繕課長・図書館建築部長として陣頭指揮を執った工学部の内田祥三(のちに総長)の下、岸田日出刀がデザインしたものである。『内田祥三先生作品集』(1969)に収録された「東大図書館」(村松貞次郎解説)によれば、薬師寺東塔のものが有名な、仏塔の最上部を飾る「相輪」(九輪)をモチーフとし、「思い切って日本風にしてやろう。しかし古いもののイミテーションでもつまらぬ、という〔内田祥三〕先生の御意見で苦心された作である。薬師寺の塔のそれを参考にしたら、という考えも出たという」。