東本願寺の大噴水(2)

 京都の「本願寺」といえば東と西、二つの本願寺がある。「京都の都人」にベルサイユ宮殿の大噴水を「詰まらなし」と言わしめた「我が本願寺の大噴水」は東の本願寺にあった。寺の北側、現在の花屋町通の辺りである。今は跡形も無いが、かつては大きな池があり、池中に百六十尺(約五十メートル)もの大噴水が仕掛けられた。
 
 完成は一八九五年(明治二十八年)。当時、地元紙の『日出新聞』で設計者の田辺朔郎(後述)は「遠く望めば白龍の天に昇らんと欲するが如く、世界に噴泉多しと雖も、斯る高大なるものは甚だ稀れなるよし」(一八九五年四月十四日付)、天に向かって噴き上げる姿を昇り龍に例え、世界無比の噴水であると語っている。また、眺望をさえぎる高い建物がないおかげだろう、直線距離で七、八キロは離れた嵐山より「明に見るべし」(『風俗画報』一八九五年六月十八日号)というから、京都の景観に与えたインパクトは相当なものだっただろう。