【番外編】ホノルル・カピオラニ公園の噴水・4

 御即位大礼奉祝会は「鶴亀の噴水器」を建設すると決めたものの、いざ建設に向けてデザインや予算を詳しく調べ始めると、日本から横槍が飛んできた。
 
 奉祝会がモデルとして念頭に置いていたのは東京・日比谷公園の鶴の噴水である。奉祝会の依頼を受け日本で調査を行った「高桑與市」氏は、東京市東京美術学校を訪ね、鶴の噴水の建設費を確認している。ところが、高桑氏は「日本に於ける斯界の人々」から思わぬ意見を耳にする。
 
 「鶴の噴水器は聊か雄大を缺くの嫌いあれば外国の公園に寄進するには今少し雄大なる紀念塔を寄進したる方がよろしからん」(1915年9月8日『布哇報知』)。
 
 日比谷公園の鶴の噴水では貧弱だという。ハワイに戻った高桑氏は「美術学校長を初めとして其他専門家の意見」として、さらに詳細を報告している。
 
 「鶴の噴水などは頗る古風にて且つ御大礼には何の因縁もなし其上日比谷公園の鶴の噴水は僅かに千九十円を費せる小規模なる物に過ぎず苟くも外国に建設する紀念物ならば今一層有意味にして壮大ならざる可らずソレにつきては御大礼に因める鳳凰にしては如何との注意なり」(1915年10月2日『布哇報知』)
 
 ここでも、もっと大規模な噴水にしてはどうだという意見があったことを伝えている。また、意匠にも物言いがついていたことが分かる。「御大礼には何の因縁もなし」、「御大礼に因める鳳凰にしては如何」。鶴亀も慶事にはおなじみの図像だが、新帝の即位を祝うには、優れた天子が出るときに出現するという鳳凰のほうが鶴亀よりふさわしい図像だということだろう。
 
 結果、10月5日に開かれた奉祝会の常務委員会で、鶴亀の噴水器に代えて鳳凰の噴水器を建設することが決定された。
 
 
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 「芝増上寺前ノ紀念塔」絵葉書
 日比谷公園の鶴の噴水のほか、高桑氏は「芝公園の御慶事紀念塔」の建設費も確認している。これは以前古書市でたまたま買った絵葉書だが、おそらくこの塔のことではないだろうか(確認中)。