ミイラとなった奇々妙々の珍動物

 1937(昭和12)年12月発行の雑誌『歴史写真』174号に載ったミイラである。「般若と人間と蛇から成った珍動物」という触れ込み。一言も妖怪とは書かれていないが、妖怪ミイラの一種といってよいだろう。こんな妖怪の伝承があるのどうか判らないが、ひとまず「般若蛇」とでも呼んでおこう。名著『妖怪ミイラ完全FILE』に載っていない掘り出し物である。
 
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 般若蛇さんのプロフィールは次の通り。
 「名古屋市中区葛町一三三番地金澤竹次郎氏の秘蔵に係るもので顔面は般若の面の如く胴体は人間に似通っているが頭部には二本の角を有し、腕二本、手の指は左右各々三本宛で鋭い爪が附いている、腰部以下は、■見蛇のような形であるが鱗がなく、全身には粗い微毛が生じている。身長は約六尺で胴の廻りは五寸程である、同家の家宝として先祖代々珍蔵せられ、其間、動物学の大家其他専門家の鑑定を乞うたけれども遂にその何物たるかを断じたるものなく、従って何時の世、何処に棲息していたか一切不明である」
 
 左下の人魚さんは現在、鹿児島県奄美市の原野農芸博物館に所蔵されており、ちょくちょく紹介される斯界の有名人、いや有名魚?
 
 
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 『歴史写真』に載った般若蛇さんと人魚さんの写真はいずれも「名古屋 松島敬楠氏」が撮影したもの。人魚の所蔵者は和歌山県猿川村の東浦庄太郎氏と紹介されており、上記の新聞記事(とある新聞社―名古屋の新聞社と思われる―が開催した珍品展覧会)と同じ。和歌山のミイラと名古屋のミイラが揃って名古屋で撮影されたとすると、この珍品展覧会で撮られた可能性がある。新聞記事では不明だったイベントの時期が「昭和12年11月~12月頃」と絞れたのかも知れない。